版画

久しぶりに

久しぶりに版画を買いました。
神保町の版画、浮世絵系を扱ったお店で、花と鳥を題材とした昭和期の作品。
作家は福田翠光。ネットで調べたらやはり鳥の作品が多いようでした。
彫り師は腕の良い方らしい。存命かどうかは分からないけれど、生きていたら90才以上だと画廊の方が仰ってました。

版画は四枚あって
福寿草とウグイス。
河原撫子と黄セキレイ。
ヒヨドリと烏瓜。
栗と連雀。
そのうちの黄鶺鴒と連雀をお持ち帰りしました。2枚買うのはちょっと高かったけど、あまり作品がバラバラになるのも寂しい感じがしたので奮発。

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一本一本の線がきりっとしていて色合いも美しい。
もう一枚の河原撫子も愛らしく上品です。

2年ぶりくらいの版画購入となりましたが久々に嬉しい出会いでした。

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川瀬巴水との出会い

7月25日から9月3日まで、赤坂のニューオータニ美術館にて川瀬巴水展が開催されています。
私も昨日前期の展示を見てきました。
私の好きな新大橋や清洲橋は後期のようですが、作品数も前後期合わせて149点(他スケッチや資料・ビデオなど)ということで、なかなか充実しているように思います。
また1500円の図録は装丁も立派でお買い得な感じでした。

この展示会はその後高浜市やきものの里かわら美術館南アルプス私立春仙美術館などもめぐるらしいです。

さて、そんなこんなで本日は私と巴水との出会いについて。
以前に書いたままお蔵入りしていたものをアップしてみたいと思います。



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時は3年前。
ところは神保町。浮世絵や版画を扱う古書店。

広重やら豊国やら国芳やら、江戸期明治期に摺られイイ感じに退色し、セピア化もしている木版画が並ぶ壁。
そこで私は鉄色の雨中に黄色く明かりを灯した一枚の作品に目を留めました。


タイトルは「新大橋」。

おや、うち(現1LDK)の近くじゃないですか。
そんな親しみもあってもう一度よく見てみることに。



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「帝都の雨音が聞こえる」


とっさに浮かんだ言葉がそれでした。
我ながらビミョーなキャッチコピーだと思うけど。
端っこに「東京二十景」って書いてあり、街灯があって路面電車のレールもあるんだから、多分帝都と呼ばれた時代なんだろうと我が鶏頭は短絡的に解釈したらしい。
後で調べるとこの都電36系は70年代まで走っていたそうだから結構な誤解である。
でもその時私が聞いたザーッと言う重たい雨音は、確かに帝都の雨音だったのでした。


それはともかく。
よくよく見れば見るほど、小気味よい構図と隅々までに行き渡った技巧性に感嘆する。
篠突く雨、橋を照らす灯り、それを反射する路面、微妙な空の明暗。精緻で直線的な橋と路面電車のレールのカーブ。
すべてが見事なまでにきっちりとマニアックなほどに描かれ込まれている。
これを彫って、これを摺ったのね。……うーむ。うむうむ。


で、家に帰った後、いそいそと川瀬巴水の名前を検索したのですが、その時、国内ではまだ巴水の画集も出ていませんでした。あるのは絶版と英語版だけ。
webのトップページにも外つ国のサイトが出てくるくらいで。
けれどそうして検索してゆくうちに、今度は「イギリスは美味しい」で有名な林望先生の「夕暮れ巴水」という著書を知ることに。


その林望先生は、今年1月に放送した「美の巨人たち」でこう語られた。
「ノスタルジー、ポエジー、文学、哲学、想い、そう言う懐かしさ、そういうセンチメントを読むのに川瀬巴水の版画は最高の物ですね」


しかし私がこの絵を見て感じたのは、プラス古色漂う劇画的なミステリーでした。


こんな雨の中に人力車を走らせて、一体この人はどこへ向かうのだろう。
幌を叩く雨、軋む車輪、力車を引く人の足音。
なにか横溝正史的な事件でも始まりそうな暗色の浪漫。


あとで他の作品を見るごとに、その叙情性、ノスタルジーこそ巴水の真骨頂と知るのですが、やはり私のマイベスト巴水はこの「新大橋」です。
それ故に、「夕暮れ巴水」の表紙にこの絵が据えらていたのがちょっと嬉しかったりも。
作中の詩では、リンボウ先生はもう少し艶っぽく優しい発想をなさってましたけれど。


あのとき出会った絵、値段は確か12万とかそれくらいだったかな。
(今は確実に人気が上がっているのでもっと高いと思いますが)
値札に保存良って書いてあったなぁ。買えば良かったかなーと、時々思い返します。
でもまだ巴水も、そして版画も分からなすぎて、ただ久しぶりに「いい絵を見たなあ」と思っただけで、キヨミズの舞台からダイブする勇気などなかったのでした。
ちょっと悔しい。
けれど巴水を知ることが出来て良かった。そんな出会いの一枚だったのでした。

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